ミミッキュ

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"こんな夢を見た"

──ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……
 目覚まし時計の音に意識を引っ張られ、瞼を上げ目だけを動かして辺りを見回す。
──夢……か……。
 上体を起こし、胸に手を当てる。
──ドッ、ドッ、ドッ、ドッ……
 耳の奥に響く拍動と共に、シャツ越しに胸に当てている手が激しく上下する。心做しか、息も荒い。
 恐らく、先程まで見ていた夢のせいだろう。
 断片的にだが、黒い《何か》に追われ、その《何か》から走って逃げている夢だった。《何か》の正体は分からないが、その《何か》に漠然とした恐怖を抱いて逃げていた。
 だが、息が荒くなっているのは、恐怖によってだけでは無いだろう。
 俺は《何か》から必死に逃げていた。知らない場所で、全力疾走で逃げていた。──夢の中だが──物理的な酸欠状態からの息切れもある気がする。
──どっちにしろ夢見悪すぎ……。
「みゃ〜ん」
 横から、するり、とハナが現れ、毛布越しに俺の太腿の上に乗って丸まると喉を鳴らして、前足で交互に押して太腿をこね始めた──つまりフミフミしてきた──。
「……」
 ゴロゴロ、という音とフミフミされている感触のリズムに身を委ねていると、動ける余裕が出てきて、ハナの背を撫でる。
「なんだ、朝っぱらから甘えたか?」
「みゃあん」
 喉を鳴らしながら返事をすると、ころん、と転がって腹をこちらに向けてきた。ふわふわの腹を優しく撫でると、ゴロゴロが少し大きくなった。
「お前……」
 呆れの声を漏らしながらも数分戯れる。
 ふと、先程までの息苦しさが無くなっている事に気付いた。
「……」
 ハナの頭を撫でる。
──ありがとな。
 ハナを抱き上げて、顔を洗いに洗面所に向かった。

1/23/2024, 11:49:51 AM