無色の世界
青も、黄も、赤も、緑も、紫も
まだ、知らないまま。
お母さんの瞳も、
空も、春に咲く桜も、
花畑も、虹も——
私には、触れられない色。
私の世界は、ただひとつの色でできている。
名前も、輪郭も、よく分からないけど、
それだけが、ずっとここにある。
みんなはそれを「白」と呼ぶらしい。
白は綺麗だと、教えてもらった。
同じ白でも、明るい白や、沈んだ白があると。
でも、私にとってはどれも同じで、
ただ、静かに広がっているだけ。
その中でひとつ、
足元にある白が、いちばん好き。
「土」と呼ばれるそれは、
どこまでもやさしくて、
なぜか、少しあたたかい気がする。
——それでも、思ってしまう。
プールの色も、
星の色も、
誰かが選んだ服の色も、
一度でいいから、この目で見てみたい。
きっと、世界は
今よりも、ずっと遠くて、ずっと近い。
だから私は、願ってしまう。
この、静かすぎる白の中から
いつか、抜け出せる日を。
4/18/2026, 2:52:30 PM