7/3 お題「この道の先に」
林のすぐ近くに、小さな村があると聞いた。もう夕刻だ、できるなら一晩の宿を求めたい。
林を抜ける道を教えてくれた少年は、理知的な話しぶりをしていた。さぞかし賢い子なのだろう。
ふと、懐に手をやった時、財布がない事に気づいた。さては落としたかと、元来た道を辿る。案の定、草むらに落ちていた。拾って懐に戻す。
さて、と振り返ると、林の中にあったはずの細い道は消えていた。これは面妖な、とあたりを見回すも、村があるであろう方向には明かりのひとつもない。
狐につままれたような、とはこの事だろうか。ともあれ元の道に戻らぬことには、旅を続ける事もできない。どうしたものかと思っていると、
「おじさん、迷子かい?」
声をかけてきたのは、今度はおかっぱ頭の幼い娘だった。
「この道の先に、神社があるよ。ひとつ、お祓いしていきなよ」
狐が憑いてるよ。娘は、にいっと笑った。
(所要時間:17分)
7/2 お題「日差し」
春のうららかな日を浴びて。
夏のじりつく日を浴びて。
秋の傾く日を浴びて。
わたしたちはのびのびと育ち、やがて刈られます。
そして穂をしごかれ、籾を剥かれ。
水で炊かれて、彼らの口に入り。
彼らの力の源となって。
そして彼らは、次の世代のわたしたちの籾を蒔くのです。
不思議なものでしょう?
太陽は、その営みのすべてを見守っているのです。
不思議なものでしょう?
(所要時間:5分)※構想除く
7/3/2023, 12:15:54 PM