シシー

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 久しぶりに体重計にのった。
夏がとんでもない猛暑をふるってきたおかげで毎日滝のように汗をかいている。しかも夏バテしたのか胃の調子が悪くて食べる量が明らかに減った。水分だけはとっているけど味がついていると吐き気がするから水しか飲んでいない。
この上なく不健康な食生活から言えること、それは。

「絶対痩せてる!間違いない!私は痩せた!」

 何を隠そう私はデブだ。肥満だ。歩く脂肪の塊だ。
万年ダイエッター(笑)にようやく希望の光が差したのだ。
不健康?リバウンド?そんなの痩せてから考えればいいんだよ!
 それはもうワクワクドキドキ、脂肪をタプタプさせながら体重計にのった。ピピッと電子音が鳴って結果が表示される。さあ、歓喜のときだ。

 突然、部屋が真っ暗になった。
停電か、と思い天井の照明を見上げたときだ。

 パァァァッと光り輝く何かが私の頭上に降りてきた。なんと表現していいのか分からないが、目を逸らすこともできないほど神々しい。
なるほど、これはあれだ。ゲームとかラノベでよくあるナレーションがピッタリなあれだ。

『―神様が舞い降りてきて、こう言った』

 おお、本当にこんなナレーションつくんだ。
なぜか頭に直接響くきれいな声に、不相応な感想しか出てこない。自分の教養の無さが悲しい。
 美しいラッパが高音でファンファーレを奏で、どこからか雪のようにひらひら光の粒が降り注ぐ。美しい光景にほぅ、と感嘆を漏らせば、光り輝く何かがより一層輝き出した。
 あ、これ。お告げでもあるのかな、

『おぬしは、太った』







 ピピッと電子音が鳴った。
神々しさなんてなかったかのように、いつも通りの見慣れた部屋に私はいた。照明も消えていないし、つけっぱなしのテレビの音も聞こえる。
白昼夢でもみていたのだろうか。もう夜だから明晰夢か。
暑さで頭ヤラれたのかな。

 足元でチカチカと体重計が点滅している。なんとも幸先の悪い言葉をきいたせいで確認するのが恐しくなった。
でも、女は度胸だ。すでに結果が表示されているだろう画面を恐る恐る確認した。

「…太ってる」



      【題:神様が舞い降りてきて、こう言った】

7/28/2023, 5:56:02 AM