かたいなか

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「どうして、肉まん食いたい日に限って準備中か、
どうしても、キャッシュレスの残高が1円足りない、
どうしてもっと、早く気づかなかったのか。
他に『どうして』といえば、何だろうな?」
時々、「このトレンド、どうして上がってきた?」って思うワードがSNSに上がってくることはあるわな。
某所在住物書きは次々投稿される映画だのアニメだのの動画を観ながら、分かるだの、俺には刺さらねぇなだの、頷いたり首を傾けたり。
で、誰が始めたのだ。この「こういうの好きなんでしょ選手権」は。

「こういうの観てる場合じゃ、ねぇんだけどな……」
投稿分書かねぇと。残り時間6時間半じゃん。
物書きはスマホ上部の時刻を確認するものの、動画から気をそらすことができず――

――――――

日曜日の朝のハナシ。
土曜日に職場の先輩のアパートで、互いの生活費節約術としてシェアディナー食べて、丁度初雪が降って、
私は、雪道用の靴を履いてなかった。
路面凍結が怖いから、その日は先輩のアパートに宿泊避難。翌日気温が上がりきってから、自分のアパートに帰ることにした。
先輩は土曜日のうちに日曜の朝ごはんの仕込みをしてくれてて、白米より低糖質なオートミールを使った鶏雑炊風の予定。おいしそう。
雑炊だし、普通に食べられると思ってた。

で、翌朝。日曜日。
寒暖差か、ホルモンバランスだの自律神経だのの乱れか、完全に、ベッドから起きられなくて、食欲も全然無くて、バチクソなダルさとともに目が覚めた。
起きられない。 どうしても、起きられない。
気合いが足りないとか早寝早起きの習慣の崩れとか、そんなんじゃない。これはきっと分かる人にしか分からない。ともかく、どうしても、胃も体も動かない。

「なんだ、もう起きたのか」
ジャパニーズアロマポット、茶香炉に火を入れて、本棚のなんか難しそうな本を読んでた先輩が、私のウーウーなうめき声に気付いた。
「お前にしては早い。飯はどうする?もう食うか?」
サーセン先輩。今はそれどころではないです。

「からだうごかない」
「例の、突発的な酷い倦怠感か。食欲は?」
「ない。胃が、うごいてない。きのうから仕込んでくれてたのに、なんか、ごめん」

「問題無い。鶏雑炊から雑炊を抜けば良いだけだ」
「へ?」

「どうしてオートミールを選んだと思う?」
ちゃぷ、ちゃぷ。
小さなスープカップに、キッチンの小鍋から何かすくって入れて、先輩はそれを私に持ってきた。
「白米は炊いて、食わなければ余るが、オートミールは食う直前に食う量を、熱湯なりスープなり、牛乳なりを入れて混ぜるだけで良い。よって急なキャンセルに比較的強い」
ひとまずそれでも飲んで、温まっておけ。
先輩から渡されたのは、具材少なめの、コンソメみたいな琥珀色した、ぬる過ぎず熱過ぎずなスープ。
本当は、これにオートミールが入って、雑炊風になる予定だったんだろう。
ひとくち飲むと、なんとなく、ため息がもれた。
「つまり、お前の体調に合わせやすいわけだ。食えそうならそこそこの量ブチ込めば良いし、食えそうにないなら、雑炊風ではなく、スープとして出せばいい」

「おいしい」
「そりゃどうも」
「コンソメだ。ちょっと洋風だ」
「オニオンコンソメと、少しのめんつゆで味付けしている。不評であれば今後は控える」

「鶏肉入ってない」
「胃が動いていないと自己申告しなかったか?」

2杯目が必要になったら、いつでも呼べ。
言い残した先輩は定位置に戻って、また本棚の本をバラリ、ぱらり。
ダルいのはダルいし、冗談抜きでまだ動けないけど、
スープで体がちょっと温まったおかげで、心の方は、なんかほっこりできた、気がした。

「先輩おかわり。鶏肉多めで」
「無理をするな。後で苦しむのはお前だぞ」
「無理じゃないもん。多分大丈夫だもん」
「あのな……?」

1/15/2024, 3:26:13 AM