郡司

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君と出逢って、私のアンカーが増えた。錨。ground   anker。生きる理由と言うと大仰に聞こえるかもしれないけど、仕方ない。

以前の私には、生きることへの執着…というか、肯定的な意欲、のようなものが、薄かった。身体が死に至らないから、漂うようにただそこにいただけ。一日のほとんどの時間、思考もできず部屋の壁だけ見ていた時期もある。やりたいことなど何もなかった。何故生きてるんだろう、食べてるからかなんて1回呟いただけの日とか。精神科にはかかっていない。念のため。

漂っていたから、身近な流れに引っ掛かりものごとが起こり進んだ。結婚などは、回っている全自動洗濯機の水流に放り込まれたTシャツさながらだった。心の波に変動があったものの、結局は義務らしきものが主軸になり、主体性が薄いままなのは変わらなかった。

子どもは私の最初のアンカーになった。最初のうちは義務感に寄りがちではあったけど、「親という部分は子どもが育てる」というのは本当だと思う。きびしい不足や人の不始末を始末する中でも、生き抜いて行く意志が初めて出てきた時期だった。

ひとり、またひとり、大切な存在を見つける度に、アンカー(生きる理由)が増えた。アンカーであってくれる人が居ると、たくさんの人の、それぞれの輝きや温度が見えるようになった。星だ。私のアンカーは私の星。

人の世に居るから、自分が重いものにならないように(だいたいこの惑星は“重い”のだから)、「執」というものを削ぎ落とすことに努めてきた。烈火である必要はほとんどない。確かな熾火であることは幸いへ歩く原動力になる。静かな平安の心は力強い洗練の基だ。

昔の自分がどうだったか振り返ると、本当に自分自身なのかと思ってしまう。でも確かに、ひとつながりの自分だ。

君という星にであったことは、私が自分自身になるのを加速してくれている。感謝を伝えるには言葉では足りないくらい。感謝は愛の、側面のひとつ。

5/6/2024, 6:33:54 AM