NoName涼芽

Open App

いつものお宅に到着した
仕事を始めたころからのお客様だ

ヒョイと低い生け垣からのぞくと
何やら庭先で穴を掘っている

ああ、こんにちは
何か植えるのですか?

先生かあ~まあ上がってくれよ~

慣れたお宅の玄関をあがり
居間のこたつにむかう

猫に奇襲をかけ
捕まえるとネットに放り込む

診察を終え

まあ~お茶でも飲んでってくろ~

出されたお茶とセロハンに包まった
ゼリーを一つ口にした


さっきの穴は~何を植えるの?


少しの静寂


先生ょお~
俺が死んだらよ~
あの穴にな~

俺の猫たちを埋めてくれないかあ~


驚いて変な声ではあっていうのがやっとだ


なんで猫を埋めようと思うんですか?
誰か飼い主をさがすとか、、、


い~やあ
先生ょーお~

誰よりもずっと

どこの誰よりもずっと

俺が一番あの猫たちを愛してるんだ!

だから

俺が死んだらよ~
あの穴に猫埋めてくろ


底の無い沼のような
怪しい光が宿る飼い主の目に

どうしたものかと


庭に目をやる


ぽかっと空いた

その穴も

深さは知れない沼のようだ

ふぅ~。


こんな愛情もあるのだろうか、、、、










4/9/2024, 12:12:31 PM