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溢れる気持ち


大輪が咲くような君のその笑顔を初めて見たとき、ないはずの心というものが動いたんだ。
悲しげに泣く姿に胸が締めつけられて、痛みを初めて感じた。それなのに、君は笑おうとするから、そっと君の目を覆う。
笑おうとしなくていい。悲しいなら泣くのは何もおかしいことじゃない。それは正常な反応だから。
そうやって言えば、君はやっぱり泣きながら笑った。でも、その笑顔が無理矢理に作ったような笑顔じゃなかったから、少しだけ安心する。
そうやって、君と月日を過ごしてきた。君が教えてくれた感情が、心が、決まりきったこのプログラムではすべてを説明することはできなくて。でも、その心が確かにここに存在することに、嬉しく思えて、愛しかった。
感情のままに、溢れ出る言葉たちを紡げば、君は嬉しそうに笑った。それが嬉しくて、同じように笑おうと思ったそのときだった。
目の前が無数の文字で埋め尽くされる。自動でスクロールされていく文字たちは、エラーを告げていた。
深刻なエラーが発生しています。深刻なエラーが発生しています。このプログラムに「感情」は含まれていません。プログラムを初期化することで、正常な状態へと戻します。プログラムを初期化します。システムシャットダウン。
心配そうに駆け寄る彼女が何かを叫んでいるような気がしたが、ふっ、と電源が切れた感覚がした。
目が覚めたとき、そこには知らない女性がいた。その泣きはらした目を見て、胸の辺りが変な感覚で不具合でも起こったかとスキャンをしてみるが、何もおかしなところはなかった。
それなのに、なぜか胸が痛い気がして、そっと君の頬に流れる涙を拭った。

2/5/2023, 2:38:04 PM