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空想が好きだった

叶わない願いも、度胸の伴わない夢も、存在しないものも何もかもそこにはあって良いから
そこに等身大のスケールは無いから

でも、いつしか気付いてしまう
その空想に意味はないこと、意味のないことに時間を割けるほどの余裕が自分には残されていないことに


空想が嫌いになった

日々に刻まれた数字が自分の形を痛いほどに写してしまうから
型取られた自分の直径が限界の距離だと知ってしまったから


やがて切削された形は1/1すら失った。
自身の定義を簒奪した破片の塊がそこにはいた。
その頃には空想は失われていた。


それでも忘れられない
いや、忘れたくない

辿り着けないほどの遠大な宇宙は、
その実、
自身と形を同じくする等身大の実像であったことに気付いたから


だから、願って歩くのだ。
最早叶わぬ願いと知っていても、
この骸はそのためだけに動いているのだから。

5/10/2023, 2:25:13 AM