半年前、彼が怪我をした。大怪我だ。現場に着いた時、彼はもう意識がなかった。次から次へと溢れてくる血に、だんだんと無くなっていく頬の色と体温に、握り返してくれない手に、私の心は鷲掴みにされてぶちぶちと千切れるような惨痛で、そして乞うた。
──お願い、起きて、死なないで、息をして、大好き、お願い、お願い...!大好きなの、目を開けて、私を置いていかないで、連れていかないで、お願い、私の命をあげるから、神様…!お願いします…死なないで…──
彼は生き延びた。辛うじて、ベットの上で管に繋がれてまだ目を開けない彼を見て、あの時命の火がゆらゆらと、次第に萎んでいく様子を思い出した。
彼が仕事に復帰した。あんな大怪我を負ったのに以前と変わらずに働く彼を見て、あの時命の火がゆらゆらと、次第に萎んでいく様子を思い出した。
彼を見る度に、瞼の裏に鮮明に残っているあの映像が私の心臓を震わせる。あの光景がありありと思い出され、私の体は強張る。そして就業時刻になって彼からの連絡を受けて、やっと私の心が休まるのだ。
#心の灯火
9/2/2022, 1:04:24 PM