たーくん。

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暗くて肌寒い、早朝の港。
結構沢山の人がいて、多分俺と同じ目的で船に乗るのだろう。
『これからも、ずっといっしょだよ!はなれていても!』
……脳内で再生される言葉。
俺は弟と妹の三人で暮らしている。
早くに両親を亡くし、俺は通っていた学校を中退して弟と妹のためにバイトで金を稼いできたが、今の給料では弟と妹を学校に通わせることが出来ない。
だから俺はこの国を離れ、別の国へ出稼ぎに行くことにしたのだ。
弟と妹に事情を話したら、もちろん反対された。
俺だって、二人を置いて国を出るのは不安だ。
でも、二人に学校を通わせてやりたいという気持ちのほうが強い。
月に一度手紙を出す、三ヶ月に一度帰ってくる約束をして、なんとか説得することが出来た。
俺がいない間は、近所のおばさんに預かってもらうことにしている。
『これからも、ずっといっしょだよ!はなれていても!』
弟と妹に言われた言葉が、再び脳内で再生される。
「船に乗る人はこちらから乗って下さい!」
船員の大声で我に返る。
さっきまで周りにいた人達は、船に乗り込んでいた。
俺も急いで向かい、船に乗り込む。
いよいよ国を出るのか……。
不安で胸がいっぱいだが、弟と妹のためだと考えると気合が入る。
仕事を沢山頑張って、沢山稼ぐぞ。
俺は船のデッキから、見えなくなるまで生まれ育った国を見ることにした。
「にいちゃーん!」
「いってらっしゃーい!」
聞き覚えのある声が聞こえ、港を見ると、弟と妹がこっちに向かって大きく手を振っていた。
俺も弟と妹に向かって大きく手を振り返す。
「ああ!いってくる!俺が帰ってくるまでいい子にしてるんだぞ!」
「「はーい!」」
俺の呼びかけに、弟と妹は同時に返事をする。
船は少しずつ速くなっていき、港から離れ、弟と妹の姿は見えなくなった。
二人からパワーをもらい、心から力がみなぎっていく。
前を向き、強い向かい風を受けながら、これから向かう国の方角をずっと見つめていた。

4/8/2026, 10:12:38 PM