陽葵

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#特別な夜

明日、私は大好きな彼と結婚式をする。
結婚式は小さい頃からの憧れだった。

初めて結婚式に行ったのは幼稚園の頃。
担任の先生の結婚式だった。
当時、プリンセスが大好きだった私。
キラキラなドレスを着る先生の笑顔が忘れられなくて、
結婚式は私にとって憧れの物になった。

高校生になっても結婚式への憧れはなくならなかった。
ウエディングプランナーという仕事がある事を知り、
ブライダルの専門学校へ進学した。

就職して、キラキラな世界とは程遠く
現実は中々大変で厳しい世界の仕事だったけれど、
結婚式当日の花嫁さんの姿にやりがいを感じた。

大好きな仕事だったけれど、私も主役になりたかった。
綺麗なドレスを着たかった。

同じ職場の先輩から告白をされた時は驚いたけど、
密かな私の憧れの人だったから嬉しかった。

そんな彼と明日、結婚式を挙げる。
プランナー同士、仕事が忙しくて準備は大変だった。
それでも小さい頃から憧れの結婚式を挙げられる事が
嬉しくて頑張った。

彼も私が結婚式に憧れをもっている事は知っていたから
私の理想を叶えるために頑張ってくれた。

「なあ、明日だな」

不意に彼が話し始めた。

「そうだね。子どもの頃からの夢だったから
 とっても嬉しい…」

「そういえば言ってなかったんだけど、
 俺も結婚式、子どもの頃からの憧れだったんだ」

「え、そうなの?」

「親戚の結婚式に初めて行って、
 すげー素敵な空間だなって、
 俺もいつか自分の結婚式挙げたいなって思ってた。
 就職面接の時にもこの話、したんだよ」

「私も就活でしたよ!知らなかった…」

「それは聞いてたな笑」

「今更だけど私の理想ばっかり聞いてもらって、
 大丈夫だった…?」

「俺の理想の結婚式は大好きな人と一緒に幸せな空間を    
 作り上げる事だから、それは大丈夫」

「ありがとう…。あなたと結婚できて嬉しい」

「それはこっちのセリフだよ。お互い、他人の結婚式の
 準備も抱えながら頑張ったよな…笑」

「本当だよね笑 ちょっとセーブすれば良かったとは
 思ってる笑」

「確かに笑 明日、良い式になるといいな」

「そうだね。まあ、プランナー同士の式ですから、
 大丈夫でしょ笑」

「それもそうだな笑」

彼と笑い合う。
この空間が嬉しくて幸せだ。
明日の結婚式もきっと忘れられないものになると思う。
でも、今この時もきっと同じくらい忘れられない
特別なものになると思う。
改めて彼の優しさを、彼の愛を知り、
この人と私の憧れを叶えられる事が嬉しい。

「俺も憧れを叶えられる相手が君で嬉しいよ」

「…えっ?」

「独り言、声に出てましたよ笑」

「わあ… 聞かなかった事には…」

「しないよ笑 変な事言ってないからいいでしょ笑」

「まあ、良いけど…恥ずかしすぎる…笑」

「あははっ!」

お腹を抱えて爆笑し始めた彼を横目にきっとこれからも幸せな家庭を築く事ができると感じる。
特別な夜に窓から見える星に
これからの幸せの願いを込めてから、
今だに笑い続ける彼をどうにかしよう笑

「ねえ、笑いすぎ…!」

1/21/2024, 2:10:34 PM