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“これまでずっと”


 これまでずっと、彼とは"犬猿の仲"であったはずだった。お互いに負けず嫌いが過ぎて、目が合えば罵倒の応酬肩が当たれば拳の応酬となるのが当たり前だった。
 そんな彼が呆然と立ち尽くして泣いている横顔をみた途端に、その横顔があまりにも綺麗で瞬きすら惜しい、と食い入るように眺めてしまった自分が信じられなかった。
 跳ね上がる心臓の音が彼に聞かれてしまいそうで、そうして彼が俺の存在に気づいてしまったら、またいつもの傍若無人で俺の大嫌いな彼に戻ってしまうのかと思うととてつもなく勿体ない気持ちになった。どうにか彼に気づかれないようにと距離を取ったけれど、このまま離れてしまうのもやけに惜しく感じて、どうかバレませんようにと祈りながらそっと彼の横顔を斜め後ろ辺りから、眺めていた。
 しばらくして泣き止んだらしい彼がすっと顔を上げた。いつの間にかいつもどおりの彼に戻っていたけれど、その頬に微かに残る涙の跡を見つけて、俺が拭ってあげられたら良かったとふと思った。あわよくば、涙だけじゃなくて笑顔とかいろんな彼の表情を見てみたいし独り占めできたら良いのに……。

 「……ということがあったんだけど、これってやっぱり恋だと思うか?」
 「……」

 突然、普段はサシで話すことのない知り合いに肩を掴まれて連れ込まれた先で、唐突に始まった恋愛相談かっこ仮に俺はため息をついて天井を仰ぐ。目の前の男が冗談を言っている様子はない。ただただ大真面目な顔をして、俺の幼馴染であり彼と犬猿の仲であるはずの男への一目惚れの経緯を語っている姿に嘘はなさそうだ。
 いっそ嘘であってくれ。これまでずっと水と油犬と猿、某ネコとネズミ、そんな関係だったのに俺を巻き込んで少女漫画みたいな関係を始めないでくれ。
 どう思う?と言わんばかりに大真面目な顔のまま首をかしげてくる目の前の男の顔にデコピンを食らわせてやりたい気持ちをどうにか抑えて、俺はまたため息を吐いた。


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なんか上手くまとまらなかったのでそのうち修正します

7/12/2024, 4:07:34 PM