【この星から”死”を使い果たしたころ】
ヒト科がこの星から”死”を使い果たしたころ
ぼくらは手を繋いで「星の丘」に立っていた
「町での暮らしはどう?」
「人がたくさん居て、毎朝おっくうになるけど、元気にやってるよ。そっちは?」
「静かなもんだよ。昔と変わらずさ。」
「良いなぁ。あの頃に戻りたいよ。町は人が多すぎて。」
「あんなに都会に出たいって言ってたのにね。」
「夢は夢のままだからキレイなんだなって思い知ったよ。」
「へぇ、そんなもの?」
「そんなものさ。」
2人で夜を明かして、夜の暗闇が寒そうにコバルトブルーのブランケットを羽織ったような朝焼けに変わるころ
懐かしそうに昔を思い出していっしょに語る。
”死”が日常に溢れすぎて、諸人が”死”に手を伸ばしすぎて
誰も寄り添うものが居なくなるほど”死”を使い果たしたいま
ぼくらは2人で”なにか”に向かって歩いていく
「これでいいの?」
「わからないよ、でも、今こうしていたいってことは分かるよ」
「むかしから変わらないね」
「きみのおかげだよ」
「なにが?」
「きみがいたから、変わらないままでいられる何かがぼくの中にあるんだ」
「空っぽなロマンチストだね」
「褒めても何も出ないよ」
「褒めてないけど」
こうして、ふたりはまた”生きる”ために歩き出す。
ふたりだけが知っている暁の星空の下、「星の丘」につめたい朝の風が吹き抜けたのだった。
12/10/2024, 1:14:00 AM