るに

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8月、君に会いたい人が
いることを願うよ。
そう言って、
名前も覚えてないし
覚える気もなかった人は
去っていった。
1人で始まる私の物語。
怠惰に生きてきた私だけど
人とそこまで関わりはなかった。
まあ何人も勝手についてきては、
勝手に離れるから
中々目障りだ。
気になることや
好きなことには
歯止めが効かないほど
のめり込むけど、
興味が無いことには
とことん関心がない。
だから人も別にどうでもいい。
けど1人、
おかしなことを願った人がいた。
その人は7月の梅雨が開ける頃に、
8月、君に会いたいって
思ってくれる人が
出来ることを願うよ、と言い
また勝手に離れた。
当然そんな人はいるはずない。
数年経った時、
あの人に2つほど貸しが
あることを思い出し、
暇だったので返してもらおうと思って
聞き込んで見つけた。
8月に入りたての頃だった。
その人は既に亡くなっていて
貸しは返して貰えないままだった。
"Good Midnight!"
それからは
その人が拾って育てて
その人の最期を見届けたであろう
少女を引き取り、連れ出した。
驚くほど私に懐いていたので
少し聞いてみた。
もし私が君を置いて去ったらどう思う?
少女は微笑み、こう言った。
また会いたいから
何処までもついて行きたいと思います。
セミが五月蝿い8月半ばの頃だった。

8/1/2025, 3:56:22 PM