"落ち葉の道"
春に遭遇して以来、桜並木の通りを掃除するときは時折、というかほぼ毎回貴女と顔を合わせるようになった。
最初の頃は遠くから僕が箒を操る様子を眺めているだけだったのが、回を重ねるにつれ徐々にじり、じり、と開いていた距離をつめてくるのが面白くて、警戒心の強い野生動物みたいだなー、とこっそり思っていた。
秋口には気が向いた時には手伝ってくれるまでになっていた。
その日は袋一杯になった落ち葉を運んでくれていたのだけれど、袋に穴が空いていたのか引き摺っていく際に少しずつ葉が零れ落ちていた。
ちょっとずつ零して道を作りながら歩く様子が、栗鼠とかハムスターみたいで。
ああいう小動物が巣材を一度に抱え過ぎて、零しながらもよろよろと運んでいく映像とかあるじゃん。
丁度そんな感じで和んでしまって、声をかけずにのんびり見守ってしまった。
今みたいに動画をすぐに撮れる機械が手元にあれば絶対撮ったのに。残念。
途中で気づいて落ち葉の道を駆け戻ってきた貴女には"分かっていたなら早く言え"と怒られたし、袋に僅かに残った葉を投げつけられてしまったんだけどね。
11/26/2025, 5:24:00 AM