月下の胡蝶

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お題《夜明け前》


逢えない苦しさも。


夜が明けたら――笑顔に変わる。





一分一秒離れたくなくて。


服の裾をつかんでしまう。一瞬驚いたような顔をして、それからすぐ笑顔に変わる。


「夜が明けるまでなら、そうしてていいから。お前の歌が聴きたい。俺だけのために歌ってくれないか」


ああ、泣きそうだ。


仕事のために遠くの国へいくのに。


それは仕方のないこと。


「――帰ったら覚悟してて」

「ふ、それは俺もだ」





夜明け前に降る歌は。


夜が明けたら、笑顔を降らす。




9/13/2022, 11:41:52 AM