300字小説
AIの走馬灯
それはあくまでも対峙した人間の感傷だと言われていた。AIが停止するときに起こる『AIの走馬灯』なんて。
『当たり前です。私達の感情はあくまでも人にそう見えるように模したプログラムなのですから』
幼いときから私の養育をしてくれたAIがバグにより新しいものと変わるとき彼女は言った。
『ただ消去するだけです。それを惜しんで悲しむなど精神的負担を負う必要はありません』
でも、柔らかく諭す声が、私との過ぎ去った日々を惜しんでいるようにしか聞こえなくて。
『……大丈夫。新しいAIに私がしてきた全てを引き継ぎました。きっと彼女は貴女のよい養育者になるでしょう』
視界が歪む。
『本当に貴女は最後まで最後まで泣き虫でしたね』
お題「過ぎ去った日々」
3/9/2024, 12:29:54 PM