手のひらの宇宙
井の中の蛙(かわず)大海を知らず
この言葉は私にピッタリだ。手のひらの宇宙に拘泥して、外を見ようとしなかった。小さな小さな宇宙だったのに、それが世間のすべてだと思っていた。
「父はわが家の独裁者だ。家族が自分の思い通りにならないと、罵声を浴びせモノをぶつけ、暴力を振るう。自分の家庭内のモノは、たくあん1枚でも意のままにしたい。そうならなかったときの苛立ち方とその後の行動は、まるで2歳児のようだ」
と書かれた、中学生の息子の作文を読んでしまった。「家族の肖像」というタイトルだった。
作文は続く
「映画やテレビドラマに出てくる、アットホームなあたたかい家族は、父の中には無いのだ。僕だって、そういうあたたかい優しい家族ばかりではないのは知っている。だが、父にその一部でも知ってもらいたいのに、みんなでテレビを見ていてそういうお父さんが映っても、父には別な世界のことにしか見えないのだろう」
なんてことを、先生も当然読む作文に書いたんだ、あいつ!帰ってきたらぶん殴ってやる!
だが、作文はこう結んであった。
「僕は父が、本質は優しいのを知っている。寂しがり屋なのも知っている。だから少しでも、その優しさを家族に分けて欲しい。何をされても、なんだかんだと言ってみても、僕は父が好きなのだから」
不覚にも涙が出た。私の手のひらの宇宙は、まだ修正が効くだろうか。何から始めたら良いか分からないが、少しずつ変わっていきたい。急に優しくなったら気味が悪いだろうから、少しずつだ。
1/19/2025, 9:30:00 AM