世界は優しくなんてない。優しくしなければ、優しくなんてならない。そんなこと、早ければ十になる前に分かるだろう。遅くたっていずれ分かる。だから、頑張って、頑張って、頑張って。時にずるく、時に不誠実に、僕らは優しい世界を作るのだ。演出するのだ。そうでなければ悲しいから。悔しいから。立ちゆかないから。家族で、仲間で、セクションで。村で、都市で、国で、世界で。境を作って、せめてそのなかでもって。
それでもそれを侵すのもいる。曰く世間、曰く客、曰く他人、曰く。都合よく、随意に、合理的に、政治的に、大義をもって。いや、その逆か。
だから僕らは神を作る。描く。夢想する。慈悲深い神を、あるいは峻厳たる神を。正しきものには安らぎを、悪しきものには容赦なく。思い描き、共有し、仮託し、権威を与えて。ただし願いは叶わない。曰く届かなかった、曰く日頃の行いが、曰く、曰く、曰く、曰く。ああうんざりだ。だから僕らは神を呪う。冒涜する。汚す。無効化する。権威を否定する。そうしてすがって、引いて、もたれて、分析して、理屈をもって切り刻んで。もうすっかりおもちゃだ。
だからソレが出た時も、ホンモノの髪、あ、いや神かは判らなかった。それが前ぶれもなくあらわれ、たったひと言言ったんだ。カミサマらしく、厳然と。
君たちは自由だ。
だから僕らは逃げたんだ。ひとつの直観のもとに。
7/27/2023, 2:20:52 PM