はた織

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 この身が絶えれば地面に伏し、生存活動を停止した身体は石と化す。
 機能停止した内臓は、だんだんと腐っていき、骨を崩し、筋肉を裂いて、皮膚を突き破って、露わになる。
 鳥獣たちが、まだ温かな肉を噛み締め、ついばめ、腹を満たしていく。
 頭蓋骨を叩き出し、液状の目玉を啜り出し、臍の穴から腸を引き摺り出す。
 カラスは、その肉片と首から溢れた鮓答の白石をくちばしに咥えて飛び立った。
 やがては腐臭を周囲に漂わせ、獣たちがどんどん遠ざかっていったその時、体液に住まう微生物たちが、蛆虫となって成長し、宿主の肉を貪っていく。
 一生蠅にならぬその身をただただ肥やし続け、いつかは破裂し、余った肉塊と一緒に腐って溶けていく。
 溶けた血肉は、地面を覆うように染み渡っていく。
 赤黒くなった土からは草木が生え、体液を染み込んだ養分を吸い上げる。
 50kgの肉塊すべてを抱擁した地面は、ふたたび土色に戻った。
 屍体から生まれた草木は、陽光を浴びて、その豊かな緑を輝かせている。
 輝きに満ちた草木から花が咲き、太陽に向かって笑っている。
 これが、たましいとなった私の初めての春だろう。
 アメノウズメが、思わず裸になって踊りたくなる春がふたたびはじまる。
           (250312 終わり、また初まる)

3/12/2025, 12:48:45 PM