「なんであたしの名前はカタカナでココロなの?」
家族団欒の時間に娘が唐突に切り出した。
「苗字との兼ね合いで、画数に窮したの?」
娘は続ける。
まあ、当たらずしも遠からずってところだが、安直に返すのも何だか癪だったので、少しばかり答えに捻りを加えた。
「心だけでも、ずっと踊ってて欲しいじゃん?」
「はい?」
「だから、世の中は楽しいことばかりじゃなくてさ、辛いことや悲しいことも沢山あるけどさ、そんな世知辛い世の中にあっても、楽しく心踊るような日々を過ごして欲しいっていう親心よ」
「答えになってなくない?あたしは何でカタカナでココロなの?って聞いてんの!」
「んじゃ〜さ、心って字が踊ってる姿を想像してみ?」
「字が…踊る…」
「そんでさ、次にココロって字が踊ってる姿を想像してみ?」
「…」
「機嫌よく踊ってたのはどっちの字よ?」
「…ココロ」
「だろ?ココロはEDM辺りの軽快で重厚なリズムにのっかってノリノリに踊ってたろ?」
「…うん。フェスでタオル振り回してた」
「心はどうだったよ?」
「盆踊りしてた…」
「な?」
「うん」
——— ココロ ———
2/11/2025, 1:11:57 PM