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失恋


あの日見た夕焼けはとても美しくて。
二人で歩いた快晴の夏は眩しくて。
星が降る幻想的な夜はロマンチックで。
繋いだその手も、絡み合う指先も、触れ合う肩も、お互いの温度を分け与えるみたいに混ざり合って、一つになるのが心地よくて好きだった。
でも、君はもういなくて。悲しくて泣いていたはずなのに、いつしか、何故泣いていたのか、思い出せなくなってしまったんだよ。
過ぎる時は、決して速くはないのに。何年、何十年、いや何百年、何千年もの膨大な月日がそれを忘れさせてしまったんだ。
ようやく失った恋は、ひどく穏やかな日々を連れてきて、風が優しく頬を撫でた。
その触れ方が、何故だか懐かしくて、勝手に涙が出てきて。
そこでようやく思い出すんだ、君のことを。大好きだった君のことを、君と過ごした宝物みたいだった日々を。
もう誰もいないこの世界で、声も、顔も、名前すらも、思い出せない君のことを想って。
これは滅びゆく地球で、誰よりも長生きした人ならざるものの、最後の失恋のお話。

6/3/2023, 2:48:29 PM