椋 ーmukuー

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蝉の声はもう遠くなって朝夕も少しずつ冷え込んできた。氷菓のアイスが食べたいだなんて思わなくもなった。

いい加減高校生なんだから学習習慣くらい身に付けたいものだが、日頃のストレスがそうもさせてくれなかった。高校は中学と違って勉強面や交友関係でギャップが激しかった。ただでさえ耐えるのに必死なのに、自分の順位だとか立ち位置だとか気にする余裕もなかった。

待望の夏休み。夏期講習で半分は潰れたが、残り2週間は自由だ。そう考えてた自分が甘かった。1週間自分の欲しい言葉をくれる画面の向こうの世界の人達に溺れた。つらかった事や苦しかった事が消えて自分じゃない誰かにでもなったような気分だった。

最後の1週間。ふと我に返った時、課題にも手をつけていない、散らかしっぱなしの部屋、まともに寝ず食わずの自分にようやく気付いた。

始まり。その言葉に今や期待や希望を抱けなくなってしまった。この夏が終わらなければいいのに。戻れないのならいっそ、、、

題材「終わらない夏」

8/18/2025, 6:25:24 AM