三行

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憎らしいほど、愛している。

そんな言葉を言う人がいる。かくいう私もその一人だ。
女でありながら、他の女性の髪や瞳、その肌を愛している。

私は今日も凝りもせずに彼女と夜を明かす。

ああ、なんて辛いのだろう。
それでも愛してしまうことに心底腹が立つ。
愛を向けてしまうあの子に、大切なあの子に、牙を剥いてしまいそうになってしまう。……もう手遅れなんだろうけど。

行為の時には優しいあの子を怖がらせないように、あの子にとって都合のいい甘い言葉を囁く。
あの子にとってこれは毒であり薬なのかもしれない。

自分のこの薄汚い欲に呑まれて、あの子を愛して、どれくらいの日が経っただろうか。そう長くは無いはずなのに、1年はあったかのように感じてしまう。

やりすぎてはいけない。言葉を掛けすぎても、言わなさすぎてもいけない。
行き過ぎた先に待つのは、終焉だけだろう。

いい子なあの子のことだ。私が辛そうな顔をすると気遣う。色々と。

そんなことはしなくていい。あの子にはあの子らしく居てくれたら、私はそれでいいんだ。
いくら愛することが辛くたって、これで構わない。
この私が、綺麗なあの子を汚してしまったのに。
あの子が気にかけるほどの人ではないんだ。
私は獣だ。あの子を喰い殺してしまう。
自分ですら飼い慣らせていない。手から手綱を離しそうになってばかりだ。

その時が来てしまったらと思うと、私はとても恐ろしい。
だからこそここで辞めるべきなんだ。
終わらせるべきなんだ。
これ以上あの子を苦しめないよう。
どうか明るい道へとあの子が進めるように、とだけは願わせてくれ。
優しい人気者なあの子を、愛した内の一人からの願いだ。
私を過去のちょっとした遊びに巻き込まれたと思っていてくれ。
あわよくば、たまに思い出してくれるといいな。




『さようなら。またね。元気でいてね。』

貴女を殺してしまいたいと思うくらい、重い愛なんて、息苦しいだけよ。
私たちにはただでさえ生きずらい障壁があったのだから。
これでいいの。


さて、何も決めて居ないけれど、この後はどこへ行こうかな。

小さなバックに必要最低限の物を詰めて、大切なあの子との、苦しくも確かに幸せだった部屋を出た。


最愛の彼女が、その幸せな、幸せだった部屋で泣き崩れていたなんてことを知らずに。







「愛憎」 2023/11/27
お題に添えているかはわかりませんね。でも、私が好きな話を、好きなタイミングで、好きなように書いていきたいのです。

11/27/2023, 11:35:16 AM