Open App

 俺に向かって指をさしたそいつは口と態度はデカいがそれだけだった。腹なんてベルトの上に乗っかって、だらしない肥えた体をして威嚇してくるんだ。
「お前のやっている事は全うじゃない…!」
「ふぅん?」
 唇をわなわなと震わせて何か言ってはいるんだが
「自覚はあるし同じ台詞じゃあどうも響かないね」
 笑ってしまうよ。大きな肉の塊が揺れているようにしか見えないんだから。脂が多い分、よく燃えるが食べられそうな箇所は話の内容と同じでほとんどない。

「彼女がそれを望んだか?彼女が、彼女が…!」
「…はぁ。また、か」
 "また"熱烈なお客だ。表面をたった数回見ただけで勝手に勘違いをしたカワイソウなやつ。
 近づくなと俺が警告しに行くと、血の気の失くす癖に被害者ヅラして『不条理』だとわめき散らす。俺は相応しくないだとか、陽の当たる世界に彼女を返してやれだとか。恩着せがましく自分がヒーローになれるとでも思ってるんだろうか?
 俺はほんの少し手を加えただけで、やって来てくれたのは
「彼女がお前なんかといるのはおかしい!弱みでも握って脅して…!」
 その"彼女"からなんだよ。
 素直に関わろうなんて考えをすっぱり捨てるなら見逃さないこともない…。が、これは駄目だ。妄想が酷く下手な権力をかざして手を出しかねない。
 途中で興味がなくなって、こんな濁声より澄んだ君の声が聞きたくてしょうがない。前ならすっぱり斬り捨てていたのに君が心配するから警告という形で話し合いの機会を設けたんだけど、もういいか。

「言いたいことは終わった?」
 揺れる肉にも見飽きてしまった。

 これが終わったら君を食事に誘って…
  肉料理はやめて魚料理…海鮮なんてどうだろう。

3/19/2023, 1:52:58 AM