"まって"雲ひとつなく晴れ渡った、暑い日だった。朧げな記憶の底から引っ張り出した顔は、逆光で黒く染まって視線の在処すら定まらない。一歩踏み出す。引き摺られるようにして、更に二歩、三歩。容赦なく照りつける太陽の下、ただ歩いて、歩いて。何処へ行くのかと問うても返事はなく、痛い程こちらを掴んだ手が暑さと疲労に倒れることすら許さない。その果てにどんな世界が待っているのかも知らずに、ただひたすらに歩き続けた。
5/18/2025, 5:49:27 PM