田中ボルケーノ

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本当にこれは

本当に突然始まるから困る


今回で確か七回目、
前回は四年前で映画館で鬼滅の刃の無限列車編を観ていた時だった

煉獄さんが竈門少年に語りかける
このシーンは漫画で結末を知っているだけに胸にこみ上げてくるものがある

次はいよいよあの台詞だ、息をのむ


心を燃や





…あれ?止まった

マジかよ、こんな良い場面で機材トラブルとかあり得んやろ、と頭に浮かんだが
その思いはすぐに絶望感で打ち消された

発動してしまったのだ
時間を止める能力が

久々だから忘れていた


初めて止まった時は
現象を理解した直後、その驚きと共に
とんでもない力を手に入れたと高揚した

チート級の能力
これより世界は物理法則を超えた我が力にひれ伏すのだ、ガッハッハと

だが、問題が発生する

確かに私以外の時間は止まっている

戻し方がわからないのである

それに気づいた時、暗闇の太平洋に浮き輪一つで置き去りにされた気分になった

どうやって戻すんだよ、これ
時計も動かないから止まっている時間もわからない

初回は体感で三日間

丸三日程度、周りが動かないという恐怖で泣き疲れて
もうこうなったら裸で街中で踊ってやろうか、とズボンを脱ぎかけたその時、時間が動き出した

あの時は死ぬほど嬉しかった
脱いでなくて本当に良かった

それから謎にランダムに時間が止まる度、発動条件と解除条件を探っているが全くわからない

一番短い時は80秒ほどで動き出した

前回の鬼滅の刃の時はすぐ戻るかもしれないし、続きを観たくて映画館でそのまま待ってたけど
結局、戻らないから諦めて帰った

この時が一番長くて恐らく1週間ほど

段々慣れてはきていたものの、流石に長すぎてこっちが無限列車になるかと思った


そして今回が七回目

Mステを見てたら止まった

テレビもゲームもスマホも動かない

風も吹かないし、お月様も動かない

いきなり動くかもしれないから悪いこともできないし

この静寂の世界で

再びタモリが動き始めるのを

ただ望む


           『時間よ止まれ』

9/19/2024, 12:12:19 PM