Rei

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[放課後、バラの下で]
耳を澄ますと、ピアノが聞こえてきた。有名な曲だ。えーと、なんだったかな。ショパンだった気がする。でも、放課後の音楽室で誰が何で弾いているのだろう?ただ、音楽室に忘れた下敷きを取りにきたはずが別の事に気をとられる。
曲を弾き終わった感じがしたので、ドアをノックする。「入っても良いですか?」聞くと、ドアが開いた。「どうしたんだ?」声の主を見ると爽やかな黒髪に高身長の先生だ。彼は、今年新卒で入ってきた音楽の先生。優しくてイケメンで女子から人気があるんだよね。「すみません、下敷きを置き忘れたみたいで」と言うと先生は音楽室の中に入っていって
「これかな?」と手に白い下敷きを持っている。
「それです!ありがとうございました。」と下敷きを受け取って帰ろうとしたところ、さっきの弾いていた曲が気になって
「さっき、弾いていた曲綺麗でした!何て名前の曲ですか?」
「別れの曲、だよ。」と目を細めてどこか懐かしそうで大事そうな口ぶりで言った。
「あ、あのっ!また、聴きにきても良いですか?」
図々しいと断られるかなと控えめにきいてみる。
「いいよ。でも、放課後にこっそり弾いてるのは他の先生にも友達にも内緒にしてね?」と悪戯っぽく笑ってグランドピアノの椅子に座った。

5/5/2024, 2:21:42 AM