たとえ間違いだったとしても
たとえ間違いだったとしても、私はあなたを…
私は、殺し屋だ。だから、任された仕事はちゃんとやるし、仕事に情を持ち込まないようにしている。
だがある日頼まれた仕事の内容を見たとき息を呑んだ。
その紙には、私の父の写真。そして…概要には、闇金から三億の借金。返金見込みなし。ただそれだけしか書かれていなかったが、たとえ間違いだったとしても、私は殺さなければならなかった。。"たった一人の父"を。
仕事当日
私は書かれている住所、時刻を正確に守り現場にいた。父が来るまで時間があったので、昔のことを思い出していた。
私が幼いときに父と母は離婚し、父はギャンブルに依存してしまった。だが、優しい父はずっと変わらなかった。私が、就活に困っていると今の職場の社長が拾ってくれて父には大手会社に勤務することになったと嘘をつき報告したとき、私以上に喜んでくれた。その時の笑顔は今でも忘れない。なのに、どうして?どうして。こんなことになってしまったのか…
そんなことを考えていたら、ターゲットが来た。
私は、バレないように銃を構える。カチャ…バンッ
心臓より少しずらして撃ってしまった。それは多分、父の事が好きだから。一発で仕留めれなかったのだ。父が前の方に倒れる。父の持っていた荷物と白い箱が落ちる。なんだろう、と思い近寄り箱の中を見ると…ぐちゃぐちゃになったバースデーケーキが入っていた。そこには"お誕生日おめでとう…"という言葉と共に私の名前も書いてあった。目が、ぼやけてきた。すると父が死にかけの声で
「…お誕…生日…お…めでとう〇〇」と。死にかけで現実と夢が混在している中、ずっと私の事を思っていてくれたのだ。目から温かいものが伝う。私は、はにかみながら
「お父さん…誕生日、明日だよ?」と呟いた。
4/22/2024, 1:13:41 PM