※「おまえ、一人なの?」の続きです。
「おまえ、何してんの?」
綺麗だと思った。透き通るような白銀色の髪も、アメジストのような紫色の瞳も、少し日に焼けたような褐色の肌も。びゅん!と風が吹き、羽織った赤色がふわりと宙を舞う。目に映るすべてを目に焼き付けようと感覚を研ぎ澄ませていれば、彼から先の言葉が飛んできた。
「何してんのって…特に何もしていませんが」
言葉を反芻して思考を巡らせてみるが、思い当たる節はない。ぱちり、ぱちりと何度か瞬きをして口に出した。が、彼はそれが気に入らなかったらしい。顔をこれでもかと顰めた…かと思えば今度はため息をついて呆れたように言った。
「そうだった、おまえはそういうヤツだったよな…」
本当に表情豊かな人である。今まで彼を見てきたからこそ思うのもあるが、この一瞬だけでここまで百面相できる人は早々いないだろう。そんな彼から贈られた言葉なので先の発言は褒め言葉だと受け取っておくことにする。
「いいか、よく聞けバカ女」
「はい、何です?」
「こんなとこまでノコノコと馬鹿正直に着いて来るヤツなんかいねーんだよ、このアホ!」
6/10/2025, 1:50:09 PM