ゆらり、目の前を歩く人物の髪を見ながらついて歩く
“ねぇ、君はどうしてそんなに髪を伸ばしてるの?
三つ編みまでして、重そうに見えるけれど?”
僕の質問に金の穂を揺らしてその人は振り返り、
淡い栗色の瞳で目を合わせて答える
「これは願いですよ。私の民が幸せでありますように、
その幸せを私が守れますように、という。
確かに重たくって肩が凝ったりもしますが、
それが私の責任を実感させてくれる枷でもあるんです。」
民の命を言葉一つで生かし、殺せてしまう人は優しく…されど凛とした佇まいで覚悟を語った
王
それはなんとも輝かしいものに見えるが同時に重圧がのしかかり、常に民の命を手に握る存在でもある
そんな重圧でも挫けず民草を生かし、王侯貴族を率い国を護るため懸命に働いている彼は良い王だろう
“君はえらいね。そうやって願掛けのように覚悟の根を貼っ
て自分を奮い立たせるものにしてるんだ。”
「グランローヴァ様にそう仰っていただくと、なんともむず
がゆく嬉しいものですね。日々の努力が報われているよう
な心地です。」
くしゃりと照れ笑いをしながら嬉しそうにする彼が足を止める
ふわん
一挙一動で金の穂が揺れるその様が綺麗だと目で追っていたら、顔を覗き込まれた
でかいからって目を合わせるために腰を曲げるたぁ、家臣が見たら卒倒もんだなぁ
「貴方様は、かつてこの地に降りた際に私と似たような髪型
をしていたと絵物語で見ました。
髪を切ってしまわれた理由がおありなのでしょうか?」
“...別に、僕は初めから誰かを護るためにいたわけではないも
の。ただ……ただ、僕の髪に込められていった願いや想
い、呪いで救えるものがあったから使っただけ。”
魔法使いの髪には魔力が宿ると誰かが言っていた
それに倣って髪を伸ばして我が王を助けたいと思っていた
そんな王の治めた世界が滅びたから使い道を失い、偶然困っていた人間たちのために使っただけだ
「…実は、貴方様の絵物語を見て、髪を伸ばし始めたので
す。この世界を救った方と同じような髪型をすれば勇気が
湧くと思って……実際にお会いできて、お話を聞くことが
できて、更に力をもらったように思えます。
ありがとうございます、アーレント様。」
“いいよ、そんな礼は。君の努力で、君の力だ。
自分自身を誇ると良い。それにこの世界を救った訳じゃな
い。光をなくし、泣いていたものに杖を与えただけ。
それで皆が勝手に歩きだしただけなんだよ。”
建国記とはいつも大げさに描かれているな
大層なことはしていないのに勝手に英雄のようにされてしまう
人間の努力を上位存在のおかげと記す、もったいない
僕ががんばったんだよ!なんて胸を張って描いていいだろうに…
“まあ、とにもかくにも!
僕は君を、君の愛する民を祝福しよう。これからも自分達
の足で歩けるように、光があるようにと”
“Eanul nemul ”
最近のお気に入りの魔法の言葉に合わせて祝福を注ぐ
この世界の金の穂を持つ王よ
その金の光を絶やさずに
民達を照らし続けておくれ
玉座の前で僕に跪く彼の額に口付けをした
とある秋の話
ここで書いた物語達に、挿絵を描いていきたい
ちょっとずつ描いていつか物語と合わせてアップしたいな
11/10/2024, 3:09:11 PM