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彼女が暮らす、丘の上の豪邸に呼ばれた。
庭にはたくさんの花が植えられていて、真ん中はちょっとしたバラ園になっていた。カラフルなバラたちは、真上から見るとハートの形になっていると教えてくれた。
「やあ、これがあの有名な桜の木か」
屋敷の裏手には見事な枝垂れ桜が、もうすぐ見頃を迎えようとしていた。麓からもその美しさは圧巻だった。みな、1度はこの木の下で花見をしてみたいと思うものだ。
さて有名なのはその見事な枝振りだけではなく。この家の黒い噂と相まってありきたりではあるがこの下にはいくつも死体が埋まっていると言うのだ。
しかし知り合って間もない彼女の雰囲気を見ても。やはり噂は噂としか思えない。
「死体が埋まっているという話ですね」
「おや、知っていましたか。いえいえ、でも今日僕はそんな馬鹿げた話の真相を知りたかったわけではないですよ。あなたと、この庭と、美しい桜に会いたかったんです」
おどけてみせると彼女はクスクスと笑った。桜の花びら枝が揺れ、彼女の周りで一緒に笑うかのようだった。

「死体を大事に育てている庭に埋めるだなんて、そんなの不愉快ですわ。たとえ見えなくても気味が悪い。そういう汚いものは、相応しく汚いところに葬らなくてはね」

4/7/2025, 2:54:20 PM