一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→耳にこだま

雑踏のなか、逞しいひと言が耳に飛び込んできた。
「泣かないよ」
その声は女性のようでもあったし、少年のようでもあった。歌うような朗らかさと数多のざわめきに逆らうような力強さが、どことなく挑発的でもあり同時に確固たる信念を感じさせる。
不思議な声音に惹きつけられ、思わず辺りを見回した。もちろん声の主は見つからない。
泣かないよ。
雑踏を遮り、私の耳のなかで何度もその声はこだましていた。
泣かないよ。


テーマ; 泣かないよ

3/17/2026, 1:52:25 PM