午後の光が
床に斜めに落ちる
埃が金色に舞う部屋で、
風が赤い風船をふわりと持ち上げ
意図とは無関係に踊りだす瞬間、
弾ける笑いがこぼれた。
光る、揺れる、動く、落ちる、音がする。
笑いに理由はない。
世界は丸ごと予想外で、
丸ごと安全で、
自分を脅かすものはなかった。
やがて私たちは、
あの瑞々しい響きを失ったように思う。
歩むたびに、手のひらから
砂のようにこぼれていくもの。
幼い頃、当たり前に握っていた
温度、無邪気、驚き、直感、
むき出しの安心。
「世界が、無条件には自分を受け入れてくれない」と知った瞬間、あの無傷の響きは遠ざかった。
けれど、砂の粒のように、
響きは手のひらの下で眠っている。
触れれば、ひそやかに光を取り戻す。
だから、世界がふと揺れたり、
偶然の光や音に触れたりした瞬間、
あの笑いはほんの一瞬、
静かに顔を出すのかもしれない。
題 失われた響き
11/29/2025, 11:08:50 AM