信号機

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現実から逃げるのにはたくさんの方法がある。
だから逃げるのは簡単だ。
でもそれが現実なのかもしれない。

レンガの家の窓から外を見つめる少年。
その背後から忍び寄る少年の友達。
彼が声を張って脅かすと
少年は田舎のカエルの如く響く裏声で驚いて
即座に窓を閉めた。
少年は焦った表情で
「おい、外に聞こえるだろう?」
と怒鳴ったが
友達はヘラヘラして何の後悔も反省もしていないようだった。
でも、少年はそんな友人でも産まれてからずっと過ごしてきた。あまりにも意見が違うことがなかったからだった。
愛と金なら金、秩序か混沌なら混沌、
目玉焼きなら醤油、ラーメンも醤油
ポテトはからし。
二人がこれは自分だけと思っていたことが
同じだった。
生年月日等は違ったけれど
まるで運命だった。
少年と友達はお互いを、周りもその二人を
「前世が同じ二人」なんて言ってた。
ある日、トロッコ問題について二人は話した。
「このトロッコ問題ってタチ悪いよな」
少年は顔をしかめて言った
「分かる」
続けて友人が言った。
「どちらも死ぬんだろ?俺ならどちらでも報われないと思うんだが」
「あー、つまりは」
「『死んでも嫌だし、自分のために他人が死ぬも嫌』」
「ほらな」
「本当に」
「いつか来たりしてな」
「俺とお前か?」
「そうだ。前からトロッコが来て、第三者が勝手に俺とお前の生死を分ける。」
「俺、どっちでも死ぬかも」
「生憎、俺も。」
「なんでこんなにも現実って逃げるのが楽なんだろう」
「それが現実なんだろ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「ごめん」

2/27/2024, 12:45:13 PM