K より

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『降り止まない雨』

 出会ったのは、人気のない薄暗い路地裏。
 最初に見たのは君の泣き顔。

 まるで、晴れた日の雨のようだった。

 初めて会ったはずなのに、なんだか放っておけなかったのは、君が、お伽噺の主人公に見えたから。

 自分の人生は、お伽噺にはほど遠いから、少し憧れがあったんだと思う。

 少しの間、会話をしてたら君は徐々に泣き止んだ。
 改めて、綺麗な顔だと思った。


 その次の日も、君はあそこで泣いていた。
 理由は話そうとはしてくれない。

 そんなミステリアスで儚い君が、会ったのはたった2回目なのに、とても気に入っていた。

 また次の日も、そのまた次の日も、君はずっとそこで泣いていた。

 自分は何度もそこへ駆け寄って、君に寄り添った。


 君に会い続けて半年ぐらいだった頃、君は突然そこから消えた。

 一瞬、戸惑ったけど泣く理由は無くなったってことでいいんだよね。


 最近になって、街で君を見つけた。
 家に帰る時にたまたま見つけた。

 隣には、腕を組んで歩くほど仲よさげな人がいて、驚きの余り足を止めてしまった。


 そういえば、今日は雨が降るっていっていた。
 早く家に帰ろう。


 前がはっきり見えてる内に。

5/26/2024, 8:45:39 AM