たろ

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「落下」


小さな小さな音が、身体の芯から聴こえた。

ポタ、ポタリ、ポタン。
ピチャン、ピチョン。
カタ、カタリ、カタン。
カチャ、カチャリ、カシャン。

気にもならないその音が、少しずつ芯を喰い荒らす咀嚼音だと気が付いた頃には、
ほろほろと崩れて、大きく崩落していく手前だった。

初めは、気にもならない歪みやひずみで。
黒い影のように、澱のように、ひたりひたりと近付いてくる。
忍び寄る影を、積み重ねる澱みを振り払うと、少し視界が晴れて、何事もなかったかのように、元の世界が広がったと錯覚するのかもしれない。

これらを繰り返して、はたと気が付いた時には、泥濘に身を捕らわれて、身動きが取れなくなっていた。


ちょっと今日は、足が竦んでいる。
泣くのはまだ早い。
泣き虫な私は、それでも時々は泣いてしまうけれど。
もう少し、あと少し。
(それは、どのくらい?本当に待てるの?)
身体の内外から聴こえてくる色んな声。

パキリ。

小気味の良い音が響いて、ひとつ得心がいった。
あぁ、ついに。
ココへ来てしまったなぁ。
静かで冷たい泥沼に浸かって、私はその冷たい温度に寂しさや悲しみを想うのだろう。

6/18/2024, 1:43:58 PM