本当に二人ぼっちになっちゃったね。
私は彼女の手を緩く握りながら呟いた。
「世界に二人だけだったら良いのに」
これは数日前に彼女といたずらに願ったことで、切実な思いでもあった。
私と彼女は異性愛が大半のこの世界で、同性同士の恋人というものをやっていた。
私としては人間として彼女を好きになったから性なんてどうでもよかったけれど、周りは違ったみたいで。見物人よろしく私たちを珍獣として扱った。
私は世界に彼女と私しかいないから他は目に入らないなんていうロマンチックな気質は持ち合わせていなかったから、そういう好奇の目に晒される度にちゃんとストレスを感じた。
と、まぁそんな日々が嫌というほど続けば他はみんないなくなれと思ってしまうのは当然のことで。
…とはいえまさか本当に二人になるなんて思っていなかったけれど。
さっきから何も言わない彼女の手をあやすように触っていると、俯いた彼女が小さく呟いた。
「…𓏸𓏸は後悔してる…?」と。
ゆっくりとこちらを見た彼女の瞳は今にも泣きそうに揺れていて、その表情から、彼女は二人ぼっちになった理由を知っているのだと察した。
私は握っていた手を離し、両手で優しく彼女の頬を包み込んだ。
愛する人が涙を流しそうになっているならば、私がすることはただ1つだけ。
「…ううん、最高に幸せ」
私は互いの鼻先が触れるほどの距離でそう呟いたあと、優しく唇を重ねた。
大きな秘密を抱えてしまった彼女の罪悪感がどうか無くなりますようにと願いながら。
3/22/2023, 9:13:46 AM