凍える指先
懐かしい、な
仕事で訪れた、母校
先生と3、4人の同僚と回る校内
古い武道館の前でつい、足が止まった
自分を残して先にゆく人々
ああ、あの時もそうだった
竹刀(しない)を持つ凍える指先
冷たい床の上の裸足
それでも、素振りを皆と繰り返すと
不思議な一体感
冷たいとか、気にならなくなる
俺は剣道で日本一になる!
そんな大それた夢、叶う訳もなく
皆は俺を追い越して行ってしまった
そのうち、自分自身も、
あの時の俺を置いて大人になってしまった
武道館の隅、置き去りの手拭い
そこに日差しが差して
〇〇さーん?
俺を呼ぶ声
は、はーい すみませーん 今行きます
〝ありがとう〟〝思い出してくれて〟
あの時の俺の声
俺は振り返らず、その場を後にした
12/10/2025, 7:53:35 AM