よあけ。

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:窓越しに見えるのは

分厚い窓越しに物語を見ている。

はみ出た本心をつまんで引きずり出して優越感に浸る。繊細な心を引っ掻いてボロボロ崩して人を泣かせるのが楽しいって、よっぽど残酷だな。他人のこと玩具だと思ってそうだ。

歌声オルゴール。喉からオルゴールの音がする。飲み込もうとしたけど喉で引っかかってしまったみたいだ。

マジックで片腕が飛んでいってしまったから捜索中だ。見かけたら持ってきてくれないか?

夢から醒めたら落下して、足に大量の画鋲が突き刺さったの。そうしたらまた醒めて、今度は帽子屋さんが主催のお茶会が始まってた。美味しく紅茶を飲んでいたのに、うさぎさんに何か尋ねたら、スパンと足首から切り落とされて、私の足首は勝手に歩きだして何処かへ跳ねながら行ってしまった。私の両足、無くなっちゃった。せっかく可愛い赤い靴を履いていたのに。

盲目となった王子の両目にラプンツェルの涙が落ち、王子は視力を取り戻す。ああ!素敵な話!……そもそもどうして妊娠したお后様はラプンツェルが食べたくて食べたくて仕方がなかったの?ねえどうしてサラダにして食べたのに更にまた食べたくなっちゃったの?ねえどうして?ラプンツェルってそんなに美味しいの?それにどうしてお后様がラプンツェルを食べてたからって生まれた娘を「ラプンツェル」って名前にしたの?

栄養不足、そういう設定、ねえねえ煩い。

解釈でしかない。それは理解ではない。理想は理想、夢は夢だからこそ良いのだ。さあ、早く忘れてしまえ。

お話なんて綺麗にまとまればそれでいいの。誰かが勝手に解釈してくれるわ。

人に伝える気なんてさらさらない。勝手に感じ取って勝手に読み取って勝手に解釈すればいい。「正しい解説」をする必要があるのか?

人が他人を理解できるはずがない。精々「分かっているつもり」でしかない。どれだけ言葉を交わそうとどれだけ言葉を尽くそうと人が他人を100%理解するなんてあり得ない。

「分かってるふりしてくれてありがとう」

分厚い窓越しに物語を見ている。手を伸ばしても窓にぶつかってしまう。触れて確かめることはできない。だから全部解釈でしかない。

7/1/2024, 5:36:00 PM