「月って自分で光ってないんだぜ」
もう高校生なるのに、当たり前のことを言う先輩に私は呆れた。
「そんなの小学生でも知ってるよ」
「うそ、まじ?」と驚く姿を見て、笑う。そして同時に、もう会えないのかと涙ぐむ。そんな姿を見られたくなくて、空を見上げた。
「卒業式ってさ」とため息混じりに言う先輩。
「いっつも天気悪いよな」
「たしかに。小学校の卒業式は雨だった」
「俺も」
しばらく沈黙が流れ、顔を見合せると「泣いてんの?」と言われ自分の目から涙が溢れていることに気づいた。
先輩は大袈裟に慌ててハンカチを私に渡してくれた。
「手、繋いでもいい?」と言われ、私は戸惑いながらも頷いた。
先輩の手はあたたかくて、もう涙を抑えることはできなかった。
「手繋いだら、寂しくないだろ」
そう言う先輩を横目で見る。
__ああ、やっぱり好きだ。
私はこういうところが、どうしようもなく好きだ。
12/9/2024, 11:32:04 AM