冷瑞葵

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まだ見ぬ景色

 旅行に行き尽くしてしまった。まだ見ぬ景色を求めて世界中を回ったのだけれど、次第にどこかで見た景色だと感じることが多くなった。そもそも人間が思いつく建築物も、地球上に存在しうる自然も、その多様性などたかが知れているのだ。
 そんな自分にとって今回のニュースは吉報だった。なんでも、某国に宇宙人が到来して自分の星を案内すると言ってきたのだ。
 腰抜けのお偉いさん方は自ら宇宙に飛び立とうとは考えない。いや、当然と言えば当然だろう。何があるかわからないのだから重要な立場にいる人がのこのこと未知の世界へついていくべきではない。
 ともかく、そんな経緯で公募が行われ、後日自分は晴れて一人目の偵察隊に選ばれた。
 それは素晴らしいものだった。地球の理からは考えられない景色ばかりで、毎日胸が躍った。
 それからは宇宙旅行がブームになった。各星の宇宙人が地球にプレゼンに来て、世界中の人がこぞって地球を出ていく。特段危険に巻き込まれたという話もなかったのでブームは長い間続いた。もちろん自分は何十回も旅行した。
 そうしていくうちに気づいてしまったことがある。宇宙に存在しうる自然にだって限りがあるのだ。つまり、なんだ。次第にどこかで見た景色だと感じることが多くなった。

1/14/2025, 9:57:57 AM