「モンシロチョウ」
片仮名でこの蝶を書くと、理科の授業を思い出します。キャベツの葉をもりもり食べている、細くて若葉色で青臭いモンシロチョウの幼虫。触れると潰れてしまいそうな華奢な見た目でありながら、しっかりと存在感がある手触りを今でも覚えています。
幼虫が蛹になり、じっと眠りにつく姿は幼い私には退屈な時間でした。ですが、必死に葉を食んでいたあの若葉色のうねうねした生き物が、無事に白く可憐な蝶に変わる日を願わずにはいられませんでした。
羽化したての蝶がキャベツの葉に掴まって、翅を乾かしていた時は、別の蝶が外から入ってきたのかと勘違いしたものです。ですか、確かに育てていた蝶であると気づいた後は、嬉しさと寂しさとが静かに胸に広がりました。
飼育ケースから外へ放った日、紋白蝶はしばらくその場をくるくると飛び回った後、やがてみえなくなりました。きっと、どこかの野原へ元気に羽ばたいて行ったのでしょう。
(終)
5/10/2024, 11:08:01 AM