空が泣くと、空が泣く。
何を言ってるんだ、って思うかもしれないから、()を付けてもう一度言うね。
(人間の)空が泣くと、(地球の)空が泣く。
だから(人間の)空は、神様なんだって言われてた。ずっとずっと小さい頃から、皆にそうやって持て囃されてきた。
もう私も思春期だからさ、一寸位嫉妬とかしちゃうんだよね。
それで、ある日泣かせてみた。上手くいった。空は泣いた。
次の日、怒らせてみた。上手くいった。空は怒った。
更に次の日、喜ばせてみた。上手くいった。空は喜んだ。
次第に私は、神様を操れる人間なんて呼ばれて、チヤホヤされるようになった。
でもね、未だ足りない。私だって『神様』って呼ばれたい。人間を超越した種族へと進化したい。私の中で、ふつふつと、重い感情が蠢いていた。
その日は(人間の)空と喧嘩した。
だって仕方ないよね。思春期なんだもん。喧嘩位しちゃうよね。
でも、(人間の)空は相当頭にきたみたい。御免、って、謝ったらいつも通り仲直り、でしょ?
空は暴れた。
…あれ、此処は、何処?
いつも間にか寝ていたみたいで、私は身体を起こし、周囲を見渡した。まるで異世界の様な、荒廃した終末の様な世界だ。
あ、でも、近くに人がいる。嬉しさと安堵が同時に私を安らげてくれる。取り敢えず状況を把握する為話を聞きたい。そう思って声を掛けた。
すると、その人は私を見るなり青ざめて拝み始めた。深いお辞儀をしたかと思えば土下座もしてくる。…私は直感した。そうか、私は神になったのだと。恐らくこの景色は、私が神へ昇格したから起こしてしまった悲劇の惨状なのだと。
申し訳無い事をしてしまった。けれど、嬉しさの方が強く込み上げてきた。やった、やった。私も人間を超越した存在になれたんだ。るんるん気分で終末を歩こう。私なら世界を再生させる事だって出来るのだから。
…でも、可笑しいな。痛い。痛いよ。私は人間を超越した神様なんだから、痛覚なんて必要無いのに。如何いう事?
あ、空だ。おーい!空ー!!
空は泣いている。
無力さに嘆く一部にもなれずに。
空は泣く。
これが最期の感情になる事も知らずに。
空は泣く。
9/16/2024, 4:46:49 PM