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「無色の世界」



目を開けるのも億劫な日々が続いていた。
彼はずっと寝ている。あと半年は起きないだろう。

吸血鬼は蝙蝠に変化できると知ったのは、彼に教えてもらったからだった。蝙蝠の冬眠は、ほぼ仮死状態とも、教えてくれた。彼はいま冬眠している。だから目を覚さない。私の顔を見てはくれない。

手を取り、脈を測ると、弱々しくて途切れ途切れ。一気に不安が押しせてきた。
だが、去年も彼は起きた。
なら、今日だって死にはしないだろう。
死なない。死なない。死なせない。



本当にそうだろうか。
私は、彼が死んでしまったらどうなるのだろう。
まだ使命があるからと、生き続けれるだろうか。
ちゃんと、笑えるのだろうか。
まだ彼の写真の一枚も残っていないのに。



きっと起きた彼はこう言うのだろう。
「大袈裟だ」、「私は、この程度では死ねないから」

4/18/2024, 2:00:57 PM