教科書に書かれた「ままならない」という表現をみて、今の自分にピッタリだと思った。そうまさに、ままならない状況が続いている「澤村、聞いてる?」「あ、あぁ、すまん」心ここに在らず、気にしているのは目の端に映る幼馴染の姿、見たことのない男子生徒と何やら話をしている「いや、どうなのかな、わかんないけど」会話の端が聞こえ、困っている様子が伺える「そこをなんとか!」「う、うーん、私そういうの苦手で」「なんの話だ」「っ、大地!」思わず間に入るも相手の男はさっきまでの笑顔は何処へやら、引き攣った頬が痙攣気味だ「俺が話し、聞こうか」「い、いや、すみません!出直します!」一目散に廊下を去っていく男に悪態をつく「出直さなくていいっつーの」「大地、顔こわいって」「助けてやったのにその言い方か?」「それは…どうもありがとう、とっても助かりました」「素直でよろしい」これまでは無意識に彼女の頭をぽん、と撫でていたのが、最近は自分がズル賢いと思うくらいには計算してやっている「なんだか急に2年生から声かけること増えたんだよね」「西谷とか田中あたりに言っておくよ」「いやいや、大丈夫!この間も縁下くんが気にして声かけてくれて、助かったんだ」伏兵は味方にあり、と言ったところか「そうか、縁下が」強かな奴め「大地が幼馴染でよかった〜」当の本人は無邪気に愛想を振り撒く達人だ。このセリフも何百回と聞いてきた、もはや傷つきもしない「俺はそろそろ幼馴染、飽きてきたけどな」「飽きるとかある…?」「はぁ…お前ってさ、本当にこういう時気が利かないよな」それはいいよ、そのままで、なんて今言うつもりもないけれど「まあ、気にしなさんな」最後は俺が全部掻っ攫うから。
誰よりも、ずっと
4/10/2024, 12:17:56 AM