#5 終点
お客さん、終点ですよ。降りてくださいね。
……どうしましたか。何か事情でもありますか。
終点にはいつまでも立ち止まってられませんよ。
時も人もあなたに構う暇なんてないんですから。
無慈悲ですか。そうかもしれませんね。
しかしここで止まっていると、置いていかれますよ。
……私はただの一介の車掌ですから。それも冷たい。
あなたのことなんか知ったことではありません。
やめるなら勝手にやめなさい、としか言いようがありません。
……一つ言うならば、これからに少しでいいから期待したほうが楽しいですよ、ということです。
一縷の望みに賭けませんか。どうせこのまま捨てるなら、そっちの方が愉快ではありませんか。
……失礼、出しゃばったことを申しましたね。無責任さは自覚しております。
さ、長話が過ぎましたね。
ご乗車ありがとうございました。
__またのお越しをお待ちしております。
8/10/2024, 12:26:35 PM