真小夜

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「未来」


「今日のテーマは【未来】です。配った画用紙に未来をイメージした絵を描いてください。」

美術室はどっと賑やかな声に包まれた。「わっかんねーよー」「何でもいいんですかー?」と明るいグループが騒いでいる。勉強のできそうな人たちは、もう机に向かって何か書いている。
私は黒板に書かれた文字を独り呟く。

「未来。」

放課後。校舎裏、職員駐車場前。
私は画板に挟んだ白紙の画用紙を睨んでいる。

「何してんの?」

画用紙に影ができた。ツインテールのシルエット。
私の知っている影。

「…美術の課題。」

「ああ。未来を描くやつか。ささっと描いて帰ろうよ。」

それが出来たらもうしている。出来ないから放課後まで悩んでいるのだ。

「未来って何なの?こんな将来お先真っ暗な日本で希望に溢れた絵なんて描けないじゃん。」

「じゃあ、暗黒の世界を描けばいいのでは?」

「描いたら暗い未来が来そうじゃん…それに私将来の夢もないし…」

「面倒なやつだなー。成績のために適当に描いとけよー。」

彼女は腰に手を当てて怒りだす。

「じゃあアンタは何描いたの?」

「私。」

「えっ?」

「私は私を描いたの。だって未来なんて悪い事しか言わない大人の予想じゃん。将来も不安しかない。未来に私がいることしかわからないんだもん。」

「……。」

未来はわからない、導いてくれる人もいない、希望もない、真っ白な紙に放り出された私達。

「まだ分からないもんね。」

私は紙に線を走らせた。




6/17/2022, 12:45:19 PM