水たまりに映る空:
今日は良いことがなかった。
嘘だ。本当を言うと、今日も良いことがなかった。せめて通り過ぎた昨日を良い日だったことにしたくて、誰に話すでもなく背伸びをしたのがいやにみじめになってくる。
うつむいて歩くことを悪し様に言う人はよくいるけど、実際そんなに咎めることでもないだろう。足元に注意が向いているから小石や道路の窪みで躓くことがない。ひどく落ち込んでいるように見えるかもしれないが、存外なんともないんだぜ。
……これはこれで、なかなかどうしてみじめだな。
そんなことを思って顔を上げた途端、スピードを落とさない乗用車が踏み潰した水たまりの中身を思い切り被らされた。ああもう、本当に。
今しがた荒らされたばかりの泥水を睨み付けてやって、驚いた。面白いほど透明で、黒々と透けるアスファルトが青い空の鏡になっている。
あっけにとられるような思いで振り返った先では、あれだけ急いでいた乗用車が信号で捕まっていた。
6/5/2025, 2:08:05 PM